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一番安い信用取引はここ!

日本ではコメを生産するのにかかるコストが一俵あたり五万円、自動車の生産にかかるコストが一台につき百万円だとしよう。
一方の米国では同じくコメが二万円、自動車が八十万円としよう。 この場合、コメについても自動車についても日本より米国の方がコスト的に勝っていて、貿易をしてもそれは一方的なものになってしまうようにみえる。
ところがそうではない。 かりに生産のために使える資金が日本で四千万円、米国で二千万円だとしよう。
すると、両国がともにこつの商品をそれぞれ圏内生産するどんな場合よりも、日本が全資金を使って自動車を生産し、米国が全資金を使ってコメを生産した方が世界全体のコメと自動車の総生産量は多くなる。 各国で生産しない商品については互いに圏内で不要な分をもち寄って取引すればいい。
つまり、互いにより得意な商品の生産に「特化」した上で貿易をすれば、そうでない場合よりも大きな利益が両国に発生するというわけである。 この例のように、絶対的なコストでみると、どの商品についても片方の固に一方的な「優位」があるものの、相対的なコストではそれぞれ別の商品に「優位」が分かれるようなケースは、理論的には一般的に起こりうる。
相対的なコストで比較して優位な商品は「比較優位」にある商品と呼び、その反対の商品は「比較劣位」にある商品と呼ぶ。 そして、互いに比較劣位商品の生産を止め、比較優位商品の生産に特化して役割を分担しあうことを国際分業という。
自由貿易推進派の主張のほとんどはこうした考え方に基づいている。 また、同じ自動車の生産でもタイプごとに比較優位をもつ国が別々に分かれる可能性もある。
たとえば、大排気量のフルサイズカ−は米国、中小型車は日本という場合だ。 そうなると両国は同じ自動車という商品を生産しながら貿易によって利益を増やすこともありうる。

つまり、国際分業を産業単位ではなく細かく分類した商品の単位で進めていくわけである。 しかし、現実はそんなにうまくいかない。
少しでも保護主義的な政策の前では比較優位は意味をもたなくなる。 そもそも優位の比較基準をどこに求めるかという問題もある。
相対的な生産費は為替レ−トのちょっとした変動ですぐに変わる。 また、現在、日米間の自動車生産の勢力分布の変更に象徴されるように、比較優位のありかたはさまざまな要因によってつねに変化する可能性がある。
このように、各国政府の政策に大きく左右される今日の貿易については、比較優位のような索朴な理論で説明できる部分は次第に少なくなってきている。 一九八0年代になると、名実ともに世界のリーダーだった米国にかげりがみえ始めた。
とりわけ経済・貿易の面で日本や旧西ドイツ、それにアジア諸国の攻勢による市場の喪失が大きく響いた。 米国の貿易赤字は、八一年に二百八十億ドルを計上して以来、一貫して増えつづけ、八七年には一千五百億ドルという規模にまでなった。
その後やや減少したとはいえ、九二年度には依然八百四十三億ドルもの赤字を出している。 経済学の説明によると、各国通貨の価値が為替市場の需給関係に応じて上下する変動相場制のもとでは、米国の貿易赤字がつづくとドルの価値は下がることになっている。
すると、輸入品が割高になる一方で、輸出品の外貨建て価格(たとえば円に換算した価格)が下がって米国製品の国際競争力は強まるため、貿易収支は改善する方向に向かうはずだ。 そして、貿易収支がやがて黒字に転じるようであれば、こんどは逆にドルレートは上昇に向かう。
つまり、為替レ−トによる自動調濫メカニズムが働くことになっているわけである。 レ−トが今日までほぼ一貫してドル安基調で推移してきたにもかかわらず、米国の貿易赤字は思うように減らず、それどころか八七年までは反対に増えつづけたという事実である。
その後、八0年代後半になってようやく赤字は若干ながら減少するようになった。 これは、輸出数量×単価で表される輸出額に対して、為替レートの変化の効果が現われるのはまず単価の方で、数量に変化が現れるまでにはやや時間がかかるという事情があるためである。

したがって、ドル安によって長期的には米国の貿易赤字の解消が期待されるような場合でも、短期的には単価が下がった分輸出額はむしろ減る可能性が強い。 このように、為替レ−トの変動が長期的にもたらすと期待される効果が現われる前に、しばらくのあいだそれと反対の効果が出てくる現象を、ローマ字のJの字になぞらえて「Jカ−ブ現象」という。
輸出の増加による貿易黒字の拡大の結果、七八年には五割も急上昇して一ドル二OO円にまでなったが、日本の黒字はなかなか減らなかった。 そして、そのJカーブ効果の後半部分が現われるより前に、八0年代前半の米国の高金利政策から、日本はおもわぬドル高・円安局面を受けて、貿易黒字を累積していくことになり、米国は逆に赤字を累積し始めた。
それが八五年のプラザ合意によって、ふたたび円高ドル安時代を迎えるわけだが、このときも八七年まで米国の赤字は増えつづけ、日本の黒字も大して減らなかった。 このように最近の日米貿易をみるかぎり、為替レ−トの調整機能が思うように働かず、Jカーブ現象の肝心の後半部分がなかなか現われてこないケ−スがしばしば見受けられ、日米貿易摩擦をより深刻にする原因にもなっている。
何かモノをつくるとき、一人で全部つくるよりその工程をいくつかに分かれて多くの人で分担してつくった方が効率がよい。 これが分業の考え方である。
最初にこれを唱えたのは、経済学の開祖ともいわれる英国のアダム・スミスで、『国富論』のなかで説明している。 たとえば仕出し弁当屋を例にとると、調理人それぞれが完成した弁当をつくるのは大変だ。
ご飯を炊いてコロッケを揚けて・・・と各自別々に同じことをやっていたら、五人のコックでも二時間でせいぜい一人当たり十人分前後をつくるのがやっとであろう。 しかしご飯はだれか決まった人が炊く、コロッケは別のだれかが揚げる、野菜サラダはさらに別のだれかがつくるというように専門化しておげば、五人で五百人分ぐらいは簡単につくれるかもしれない。
この考えを貿易にまで広げたのが、国際分業という考え方である。 貿易がなぜ起こるのかといえば、一つはこちらの国は自動車はつくれるが石油がなく、あちらの国では石油はあるが自動車はつくれないという場合、互いに生産できるものを多めに生産して、それを生産できないものと交換すれば、明らかに双方の利益になる。
もう一つはこちらの国もあちらの国も両方とも石油も自動車もつくれるが、こちらの国で自動車をつくりあちらの国で石油をつくる方が全体的にみると効率がいいというケ−スがある。 その効率性の基準となる考え方を「比較優位」というが、いずれもどちらかに特化して互いに交換することになる。

石油は鉱業、自動車は工業だから互いに異なり、産業間で貿易をすることになる。 これを「垂直貿易」という。
二つの国の産業構造が異なる、または互いに補完的であるようなケ−スである。 しかしこれですべての貿易が説明できるわけではない。
低開発国が工業化を進めようとするとむしろ長期的には産業構造が先進国に似てくることが予想される。 農業の割合が減少して工業のそれが大きくなるというケ−スだ。

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